日中は汗ばむほどなのに、朝晩は上着が欲しくなる――10月は一年のなかでも寒暖差が大きくなりやすい時期です。「特に何かしたわけでもないのに疲れる」「肩や首がこわばる」「なんとなく気分が落ち込む」。そんな季節の変わり目の不調は、「寒暖差疲労」と呼ばれることがあります。今回は吉野敏明医師監修のもと、寒暖差疲労を東洋医学の「衛気(えき)」という考え方から読み解き、10月を快適に過ごすための養生のポイントをご紹介します。
10月に多い「寒暖差疲労」とは
私たちの体は、気温が変化しても体温を一定に保てるよう、自律神経が血管を広げたり縮めたりしながら調節しています。一般に、前日との気温差や一日の最高・最低気温の差がおよそ7℃以上になると、この調節にかかる負担が大きくなると言われています。寒暖差が続くと自律神経が休まる暇がなくなり、だるさや肩こり、頭の重さ、冷え、寝つきの悪さ、胃腸の不調など、はっきりとした原因のわからない不調として表れやすいと考えられています。
とくに10月は、夏の暑さで消耗した体力が戻りきらないうちに朝晩の冷え込みが始まるため、疲れを感じやすい時期です。冷房の効いた室内と屋外を行き来する機会もまだ多く、一日のなかで何度も温度差にさらされていることも少なくありません。
東洋医学で考える、体を守るバリア「衛気」
東洋医学では、体を巡るエネルギーである「気」のうち、体の表面をめぐって外からの冷えや風などの影響から体を守る働きを「衛気(えき)」と呼んでいます。衛気は、汗腺を開いたり閉じたりして体温を調節する役割も担っているとされ、現代でいう自律神経の働きや皮膚のバリア機能に近いイメージで捉えることができます。
衛気がしっかり巡っていれば、多少の気温差にもしなやかに対応できると考えられています。ところが、睡眠不足や疲れ、胃腸の弱りなどで気が不足すると衛気も弱まり、外からの冷えが入り込みやすくなります。その結果、首まわりのこわばりや、くしゃみ・鼻水、だるさといった不調を感じやすくなるとされています。また、衛気は秋に対応する臓である「肺」と深く関わり、その源は胃腸(脾胃)でつくられる気にあると考えられています。つまり、寒暖差に負けない体づくりには、「肌を守ること」と「胃腸をいたわること」の両方が大切なのです。

寒暖差に負けない、衛気を守る3つの養生
1.「三つの首」を冷やさない
首・手首・足首は皮膚が薄く、外気の影響を受けやすい場所です。東洋医学でも、首の後ろは冷えや風が入り込みやすい場所とされています。朝晩はストールや薄手のネックウォーマー、足首まで覆う靴下を取り入れ、日中は脱ぎ着しやすい重ね着で温度差に合わせて調整しましょう。「暑くなったら脱ぐ」ではなく「寒くなる前に羽織る」ことが、衛気を守るコツです。
2. 温かい食事で胃腸をいたわる
衛気のもとになる気は、毎日の食事から胃腸でつくられると考えられています。冷たい飲み物や生もの、甘いもの・脂っこいものの摂りすぎは胃腸に負担をかけやすいため、白湯や温かい汁物、根菜や生姜、ねぎなどを取り入れた献立を意識してみてください。朝食に温かいみそ汁を一杯添えるだけでも、体が内側から目覚めやすくなります。
3. 湯船と睡眠で、自律神経を休ませる
シャワーだけで済ませず、38〜40℃程度のぬるめのお湯に10〜15分ほどつかると、緊張がほどけてリラックスしやすくなると言われています。そのうえで、秋は「早く寝て、早く起きる」ことが養生の基本とされています。寝る前のスマートフォンは控えめにして、体を休める時間をしっかり確保しましょう。

無理をせず、体のサインに耳を傾けて
寒暖差疲労は季節の変わり目に多くの方が感じる不調ですが、つらさの感じ方には個人差があります。日中に軽く体を動かして汗をかく習慣は、体温調節の力を養ううえで役立つと考えられていますが、疲れが強い日は無理をせず、休むことを優先しましょう。
なお、めまいや動悸、強い頭痛、発熱などを伴う場合や、不調が長く続く場合は、寒暖差以外の原因が隠れていることもあります。自己判断せず、早めに医師にご相談ください。
まとめ
10月の大きな寒暖差は、自律神経に負担をかけ、だるさや冷え、こわばりといった不調につながりやすいと考えられています。東洋医学では、体表を守る「衛気」を保つことが季節の変わり目の養生の鍵とされます。三つの首を冷やさない服装、胃腸をいたわる温かい食事、湯船と早寝による休息を意識して、秋から冬への移ろいを穏やかに過ごしていきましょう。
※本記事は東洋医学の考え方にもとづく一般的な養生の情報です。感じ方には個人差があります。持病のある方や体調に不安のある方は、医師にご相談ください。
【参考文献】
『黄帝内経霊枢』本蔵篇・営衛生会篇
『黄帝内経素問』四気調神大論篇
久手堅司『気象病ハンドブック』誠文堂新光社、2021年
