10月8日ごろから、二十四節気は「寒露(かんろ)」に入ります。草木に降りる露が冷たく感じられるようになり、朝晩の空気にはっきりと冬の気配がまじりはじめる頃です。この時期に意識したいのが、冷えが入り込みやすい「足元」のケア。東洋医学では、足には全身とつながる経絡(気血の通り道)が集まっていると考えられています。今回は吉野敏明医師監修のもと、秋の夜長にご自宅でできる、足元のツボを使った養生をご紹介します。
寒露の頃、なぜ「足元」から整えるのか
東洋医学では、秋は「収める」季節とされ、夏に外へ向かっていたエネルギーを内側へ蓄えていく時期と考えられています。ところが寒露の頃になると、日中と朝晩の気温差が大きくなり、とくに体の末端である足先やふくらはぎから冷えを感じやすくなります。足元が冷えると気血の巡りが滞りやすくなり、なんとなくだるい、胃腸が重い、寝つきが浅いといった季節の変わり目らしい不調につながりやすいと考えられています。
また、足の内側には「肝・脾・腎」という三つの経絡が通っているとされます。なかでも腎は、成長や加齢、体を温める力に関わる臓とされ、冬に向けて労わりたい存在です。冷えが本格化する前に足元を温め、巡りを整えておくことが、この時期の養生の要といえるでしょう。
秋の夜長に覚えておきたい、足元の3つのツボ
ツボ(経穴)は、経絡の上にある「気の出入り口」のような場所とされています。ここでは、昔から養生の場で親しまれてきた代表的なツボを3つご紹介します。
- 足三里(あしさんり):膝のお皿の外側下にあるくぼみから、指4本分ほど下。すねの骨の外側のあたりです。胃の経絡に属し、胃腸の働きを支え、気を補うツボとして知られています。食欲の秋に胃腸をいたわりたい方にもおすすめです。
- 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの一番高いところから、指4本分ほど上。すねの骨の内側のきわにあります。名前の通り、肝・脾・腎の三つの陰の経絡が交わる場所とされ、冷えやすい方、女性の体調の波が気になる方の養生によく用いられてきました。
- 湧泉(ゆうせん):足の裏で、足の指を曲げたときにできるくぼみのあたり(土踏まずのやや上)。腎の経絡の始まりとされ、「元気が泉のように湧く」という意味を持つツボです。一日の終わりに足裏をほぐすと、気持ちが落ち着きやすいと感じる方も多いようです。

ツボ養生をするときの押し方・温め方のコツ
ツボの位置は、体格や体の状態によって少しずつ異なります。上の目安を参考に、押したときに「ほどよく響く」「なんとなく気持ちいい」と感じる場所を探してみてください。押すときは、息をゆっくり吐きながら親指の腹で3〜5秒かけてじわっと圧をかけ、吸いながら力をゆるめます。これを1か所につき5回ほど、痛みを感じない程度のやさしい力で行うのが目安です。
寒露の頃は、押すことに加えて「温める」ことも大切にしたいポイントです。入浴後など体が温まっているタイミングに行うと、こわばりがほぐれやすいと考えられています。蒸しタオルを足首から下にあてたり、市販の台座付きのお灸を使ったりするのもひとつの方法です。お灸を使う場合は、説明書に従い、熱さを我慢しないようにしてください。
なお、食後すぐや飲酒後、発熱時、皮膚に傷や炎症がある部分へのツボ押しは避けましょう。妊娠中の方は、三陰交などへの強い刺激は控えたほうがよいとされていますので、かかりつけの医師にご相談ください。また、足のしびれや強い痛み、むくみが続く場合は、自己判断でのケアを続けず、医療機関を受診することをおすすめします。
ツボと一緒に取り入れたい、足元の養生習慣
ツボ養生を心地よく続けるには、日々の過ごし方も大切です。まず、素足やくるぶしが出る靴下は日中だけにして、朝晩は足首まで覆う靴下やレッグウォーマーで「首」を冷やさないようにしましょう。次に、ふくらはぎは「第二の心臓」ともいわれ、歩くことで下半身の巡りを支えています。一日のなかで意識して歩く時間をつくる、座りっぱなしの合間にかかとの上げ下げをするなど、足を動かす習慣を取り入れてみてください。
さらに、足元の冷えは食事の影響も受けると考えられています。冷たい飲み物や生もの、甘いものに偏りすぎず、根菜や温かい汁物を中心にした献立を意識すると、体の内側から温まりやすくなります。ツボ押しは、特別な道具がなくても今夜から始められる手軽な養生です。無理のない範囲で、毎日の習慣にしていきましょう。
まとめ
寒露の頃は朝晩の冷えが深まり、足元から巡りが滞りやすい季節です。足三里・三陰交・湧泉の3つのツボを、息を吐きながらやさしく押し、入浴後などに温めてあげることで、冬に向けて体を整える助けになると考えられています。ツボ養生は医療の代わりではありませんので、つらい症状が続く場合は医師にご相談ください。毎日の小さな積み重ねで、心地よい秋を過ごしましょう。
※本記事は東洋医学の考え方にもとづく一般的な養生の情報です。感じ方には個人差があります。持病のある方や体調に不安のある方は、医師にご相談ください。
【参考文献】
WHO西太平洋地域事務局『WHO Standard Acupuncture Point Locations in the Western Pacific Region』2008年
『黄帝内経素問』四気調神大論篇
日本東洋医学会学術教育委員会編『入門漢方医学』南江堂、2002年
